避難所で安心を 高齢者のための体調管理と体力温存マニュアル
導入:避難所生活における体調管理と体力温存の重要性
大規模な災害が発生し、避難所での生活を余儀なくされた場合、特に高齢の皆様にとっては、慣れない環境やストレスから体調を崩しやすくなることが懸念されます。持病をお持ちの方、体力に自信のない方にとって、避難所での生活は不安が多いことと存じます。
本記事では、そのような不安を少しでも軽減し、避難所でご自身の体調を管理し、体力を温存しながら生活するための具体的な「知恵」と「準備すべき持ち物」について解説いたします。ご自身の健康を守り、安心して過ごすための実践的な情報としてご活用ください。
1. 持病管理と健康状態の把握
避難所では、医療機関へのアクセスが制限される可能性があります。ご自身の持病を適切に管理し、健康状態を把握するための準備が重要です。
-
常備薬とお薬手帳の準備
- 最低1週間分、できれば2週間分の常備薬を準備し、持ち出しやすい場所にまとめておきましょう。
- お薬手帳は必ず持ち出してください。緊急時には、お薬手帳が医療従事者へあなたの服用薬やアレルギー情報を正確に伝える唯一の情報源となる可能性があります。
- 常備薬リストの作成: 万一お薬手帳を紛失した場合に備え、服用している薬の名前、量、服用回数、持病名、かかりつけ医の連絡先などをメモしたリストを複数作成し、一つは薬と一緒に、もう一つは別の場所に保管しておくと安心です。
- ジェネリック医薬品の確認: 普段服用している薬が手に入らない場合に備え、同じ成分のジェネリック医薬品や代替薬について、かかりつけ医や薬剤師に事前に相談し、情報を得ておくことも有効です。
-
健康管理グッズの活用
- 体温計、血圧計: 普段から使用している方は、小型で持ち運びやすいものを非常持ち出し袋に入れておきましょう。日々の体調変化を客観的に把握し、体調不良の早期発見に役立ちます。
- 健康記録ノート: 体温、血圧、体調の変化などを記録する簡単なノートやメモ帳を用意しておくと、体調を崩した際に医療従事者へ正確な情報を提供できます。
-
衛生管理と感染症予防
- 避難所は集団生活の場であり、感染症が広がりやすい環境です。
- 手指消毒液やウェットティッシュ: 手洗いが難しい状況でも、清潔を保つために役立ちます。
- マスク: 咳やくしゃみが出る時だけでなく、人混みでの感染予防のためにも複数枚用意しておきましょう。
- うがい薬や口腔ケア用品: 口腔内の清潔を保つことは、全身の健康維持に繋がります。入れ歯を使用している方は、入れ歯洗浄剤や保管ケースも忘れずに。
2. 体力温存のための工夫
限られた空間と物資の中で、いかに体力を消耗せずに過ごすかが避難所生活を乗り切る鍵となります。
-
適切な休息と睡眠環境の確保
- 耳栓とアイマスク: 避難所では周囲の音や光で眠りが妨げられることがあります。これらを用意することで、質の良い睡眠を確保しやすくなります。
- クッションやタオル: 硬い床での睡眠は身体に負担をかけます。座布団やタオルケットなどを活用し、少しでも快適な寝床を確保しましょう。
- 昼間の適度な休息: 無理をせず、体力が消耗しないよう、日中も短時間の休息をこまめに取り入れてください。
-
水分補給と栄養摂取の維持
- 脱水予防: 避難所ではトイレを気にして水分摂取を控える方がいますが、脱水は体調不良の大きな原因となります。意識的に水分を摂りましょう。水筒やペットボトルに水を入れて常に携帯し、こまめに飲むことを心がけてください。
- 栄養補助食品: 食事が偏りがちな避難所生活では、ゼリー飲料や栄養バーなど、手軽に栄養補給できる食品も有効です。
-
簡易な運動とストレッチ
- 長時間同じ姿勢でいると、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。
- 足首を回す、ふくらはぎを揉む、足指を動かすなど、座ったままでもできる簡単な運動を定期的に行いましょう。
- 可能であれば、広場で軽度の散歩をするなど、体を動かす機会を見つけてください。
-
寒暖対策
- 避難所の環境は季節や時間帯によって大きく変化します。
- 重ね着できる衣類: 体温調整がしやすいように、薄手の衣類を重ね着できる準備をしておきましょう。
- ブランケットや保温シート、使い捨てカイロ: 夜間や早朝の冷え込み対策に役立ちます。
3. 避難所生活の知恵と配慮
避難所での集団生活では、心身の健康を保つための細やかな配慮が求められます。
-
プライバシーの確保
- 簡易的な間仕切り: 段ボールや大型の布などを用いて、寝るスペースや着替えの際に、周囲からの視線を遮る工夫をすることで、心理的な負担を軽減できます。
- パーテーション利用の検討: 避難所に簡易パーテーションが用意される場合もあります。積極的に活用を検討しましょう。
-
トイレの利用と工夫
- 避難所のトイレは混雑しやすく、清潔さが保たれにくい場合があります。
- 携帯トイレ: 夜間や混雑時に備え、個人用の携帯トイレを数個用意しておくと安心です。
- 懐中電灯: 夜間のトイレ移動は足元が見えにくく危険を伴います。小型の懐中電灯を携帯しましょう。
- トイレットペーパー、流せるティッシュ: 避難所の備蓄が不足する場合に備え、持参すると良いでしょう。
-
精神的ケアとコミュニケーション
- 孤立は心身の健康を損なう原因となります。
- 無理のない範囲での交流: 周囲の方と挨拶を交わしたり、情報交換をしたりすることで、精神的な安定に繋がります。
- 困りごとは相談する: 我慢しすぎず、体調不良や困ったことがあれば、避難所の運営スタッフや周囲の人に声をかける勇気を持ちましょう。自治体や医療機関からの巡回支援がある場合は、積極的に相談してください。
4. 高齢者に特化した非常持ち出し品リスト(再確認)
これまでの内容を踏まえ、特に高齢者の皆様に重視していただきたい持ち物を再確認します。
-
医療・健康関連
- 常備薬(1~2週間分)、お薬手帳、常備薬リスト
- 体温計、血圧計(日常的に使用している方)
- マスク、手指消毒液、ウェットティッシュ
- うがい薬、歯ブラシ、入れ歯用品、口腔ケア用品
-
身体補助・生活用品
- 杖、補聴器、老眼鏡、予備の電池(補聴器用など)
- 使い慣れた食器、コップ(精神的な安心感にも繋がります)
- 簡易間仕切りになる大判の布や段ボール、ガムテープ
- 携帯トイレ、トイレットペーパー、流せるティッシュ
- 小型の懐中電灯
-
快適性・体力温存関連
- 耳栓、アイマスク
- ブランケット、保温シート、使い捨てカイロ
- 重ね着できる衣類(下着、靴下を含む)
- スリッパや室内履き(避難所内での足元の保護と清潔維持)
- 水(ペットボトル数本)、栄養補助食品(ゼリー飲料、栄養バーなど)
まとめ:ご自身と向き合い、無理なく過ごすために
避難所での生活は、誰もが経験したことのない困難を伴うかもしれません。しかし、事前に準備し、適切な知識を持つことで、その負担を大きく軽減することができます。
今回ご紹介した体調管理と体力温存のための知恵や持ち物は、決して特別なことではありません。ご自身の身体と心の声に耳を傾け、無理をせず、できる範囲で実践することが最も重要です。困った時は一人で抱え込まず、周囲の方や避難所の運営スタッフに相談する勇気も持ってください。
この情報が、皆様の避難所での生活が少しでも快適で安心できるものとなる一助となれば幸いです。